ルーサーとストロベリー・ムーン姉妹のスワンプの極み Luther Dickinson and Sisters of the Strawberry Moon / Solstice (2019)

 
ノース・ミシシッピィ・オールスターズのフロントマンであるルーサー・ディッキンソンは、バンドやソロ活動のほかに様々なプロジェクトで活躍している。例えばメンフィスのブルース・シンガー、アルヴィン・ヤングブラッド・ハートや昨年活動を再開したスクイーレル・ナット・ジッパーズのジンボ・メイサスと作ったSouth Memphis String Band、ルーサー以外は女性ばかりのフォーク・バンドThe Wandering、亡き父追悼のためのThe Sons Of Mudboyなどなど。この他にもジョン・ハイアットやジム・ローダーデイルらとのコラボレーションなど八面六臂の活躍である。

それはちょうど父親のジム・ディッキンソンがメンフィスやマイアミなどでプロデューサー、スタジオ・ミュージシャン業で活躍するかたわらMud Boy & The Neutrons、Raisins In The Sunなどのバンドに参加したり、自らのフィールド・レコーディングと称しデルタ・エクスペリメンタル・プロジェクト・シリーズをコンパイルして南部の伝統音楽にスポットライトをあてたのとよく似ている。

Luther Dickinson and Sisters of the Strawberry Moonは、そんなルーサー・ディッキンソンの新しいプロジェクトで、『Solstice』はその1stアルバムだ。ここでルーサーは、アリソン・ラッセル(バーズ・オブ・シカゴ)、シャーデ・トーマス、エイミー・ラヴェル、エイミー・ヘルム、コモ・ママスの5組8人の魅力的な声を持つ女性陣にヴォーカルを任せ、自身はプロデュースとギターに専念し裏方に徹している。

アルバムの口火を切るバーズ・オブ・シカゴは、アリソン・ラッセルとJTネロことジェレミー・リンゼイのおしどりデュオ。2ndアルバムの『リアル・ミッドナイト』がジョー・ヘンリーによってプロデュースされたことにより国内盤もリリースされ広く知られるようになったバンドだ。3作目の『ラブ・イン・ウォータイム』をルーサーがプロデュースした関係でこのプロジェクトに参加したのだろう。1曲目の「Superlover」はそのアルバムに収録された曲の再演だ。

シャーデ・トーマスとエイミー・ラヴェルは、ルーサーのプロジェクトのひとつThe Wanderingのメンバー。ヴォーカルだけでなくルーサーのソロ・アルバムではちょいちょい顔を出しているお馴染みのリズム・セクションでもある。ドラムスのシャーデ・トーマスは、ヒル・カントリーのリジェンド、オサー・ターナーの孫娘で、彼女のファイフ&ドラムはプリミティブな南部の情感とグルーヴを醸し、遥かアフリカへと遡っていくようだ。

アップライト・ベースのエイミー・ラヴェルは、甘く掠れたソプラノが魅力的なシンガーで、2ndアルバムの『Anchors & Anvils』はジム・ディッキンソンが、4枚目の『Runaway's Diary』はルーサーがプロデュースをしている。そして最新作の『Hallelujah I'm A Dreamer』は夫であるギタリストのウィル・セクストンとのデュオ・アルバムで、本プロジェクトではエイミーがヴォーカルをとるトラックにはウィルも参加してデュオ・アルバムの収録曲を再演している。

もう一人のエイミー、エイミー・ヘルムは、もちろんリヴォン・ヘルムの愛娘。彼女の2ndアルバムの『This Too Shall Light』にバーズ・オブ・シカゴのアリソン・ラッセルとJTネロがバック・ヴォーカルで起用されたことから繋がりができたのだろう。エイミーの歌う「Like A Songbird That Has Fallen」は映画『コールド マウンテン』のためにボブ・ニューワースとT・ボーン・バーネットが書いた楽曲で、サントラ盤ではリール・タイム・トラヴェラーズが歌っていたが、リール・タイム・トラヴェラーズのヴォーカリスト、マーサ・スキャンランは自身の1stアルバム『West Was Burning』をエイミーの招きでリヴォン・ヘルムのザ・バーンで録音している。

エイミーのもう一曲は「Sing To Me」で、「歌って あなたの声を聴かせて」「歌って あなたのドラムを叩いて」とまるで亡き父リヴォンに歌いかけているようだが、アメリカン・ロックの最高峰ザ・バンドの名ドラマーの愛娘が、メンフィスの伝説的プロデューサーの息子の主宰するプロジェクトで歌い、さらにはヒル・カントリーの長老的ブルースマンの孫娘がバックアップするというシチュエーションには感慨深いものがある。連綿と続く南部の音楽的遺産が世代を超えて引き継がれてゆく過程を垣間見たような気がする。

アルバムのA面、B面とも最後はコモ・ママスだ。アンジェラ・テイラー、デラ・ダニエルス、エスター・メイ・ウィルバーンからなるミシシッピ州コモ出身のゴスペル・トリオは、2013年全編アカペラの『Get An Understanding』でデビューを飾っているが、その何人も寄せ付けないド迫力のコーラスでアルバムを締めくくっている。

蛇足ながらアルバムは基本的には全編ジム・ディッキンソンのゼブラ・ランチ・スタジオでライブ・レコーディングされているが、曲によってはフィドルやオルガンをダビングしている。なかでも「Sing To Me」と「Til It's Gone」でのハモンドB3は秀逸だ。あのチャールズ・ホッジスがロイヤル・スタジオで録っている。

Luther Dickinson and Sisters of the Strawberry Moon / Solstice
Track List
a01. Superlover featuring Birds of Chicago
a02. Fly With Me featuring Sharde Thomas
a03. Hallelujah (I'm a Dreamer) featuring Amy LaVere
a04. Like A Songbird That Has Fallen featuring Amy Helm
a05. Kathy featuring Birds of Chicago
a06. Hold To His Hand featuring The Como Mamas

b01. The Night Is Still Young featuring Amy LaVere
b02. Sing To Me featuring Amy Helm
b03. We Made It featuring Sharde Thomas
b04. Cricket (At Night I Can Fly) featuring Amy LaVere
b05. Til It's Gone featuring Birds of Chicago
b06. Search Me featuring The Como Mamas
 

トピックやトレイラーに誘うLisa O'Neillの『Heard A Long Gone Song』 (2018)

 

久々にMM誌の輸入盤紹介ページを見て買ってみました。ジャケ写のパンキッシュな佇まいに胸がざわつき、1曲目の無伴奏シンギングに心が鷲づかみされます。

ライザ・オニールは、アイルランドはキャバン州出身、現在はダブリンで活躍するフォーク・シンガー。これまでの3作は自主制作盤でしたが、この4作目はラフトレード傘下のRiver Lea Recordingsからリリースされています。

トラッド4曲、自作曲3曲、自作詩にトラッド曲を付けたもの1曲、ポーグス・カヴァー曲1曲の全9曲が収録されていますが、圧巻はB面1曲目のトラッド「The Factory Girl」。ライザはここでダブリンのトラッド・バンドLankumのラディー・ピート(Radie Peat)と硬質かつパワフルな無伴奏デュエットを聴かせてくれます。

ライザとラディーの「The Factory Girl」は、ラディーのアイデアによりマーガレット・バリーのバージョンとネリー・ウェルドンのバージョンを組み合わせたものとのこと。凄いです。リアム・ウェルドンの『Dark Horse On The Wind』(1976) を髣髴させます。ちなみにネリー・ウェルドンはリアム・ウェルドンの奥さんです。

自作曲ではムッソリーニ暗殺を企てたアイルランド女性を唄った「Violet Gibson」が秀逸。まるで襲撃現場の映像を見ているようで、ストーリーテラーとしてのライザ・オニールの面目躍如といったところです。

また「A Year Shy of Three」は、アイルランドの画家フレデリック・ウィリアム・バートンの描いた「The Aran Fisherman's Drowned Child」にインスパイアされて書いた自作詩をコーマック・ベグレイ(Cormac Begley)がコンセルティーナで奏でる美しいスロー・エア「The May Morning Dew」のメロディで唄ったもの。ベグレイの卓越したコンセルティーナはアルバム全体の随所で聴くことができ、いい味を醸しています。

アルバムはシェイン・マガウアンの「Lullaby of London」で幕を閉じますが、抜群の選曲です。ポーグスの3rd『堕ちた天使』で名曲「ニューヨークの夢」と肩を並べ収録されていた、これも名曲です。アルバム・タイトルの『Heard A Long Gone Song』はこの曲の一節を引用したものです。

マーガレット・バリーやネリー・ウェルドンをお手本にしたというライザの硬質なシンギングがトピックやトレイラーの世界に誘ってくれる名盤です。

Track List
A1. The Galway Shawl (Trad.)
A2. Along The North Strand (Trad.)
A3. Blackbird (Written by O'Neill)
A4. The Lass of Aughrim (Trad.)
A5. Violet Gibson (Written by O'Neill)

B1. The Factory Girl (Trad.)
B2. Rock The Machine (Written by O'Neill)
B3. A Year Shy of Three (Words by O'Neill,Musical Arrangement Trad. )
B4. Lullaby of London (Shane MacGowan)

Musicians
Cormac Begley - Concertinas
Christophe Capewell - Fiddle and Harmonium
Libby McCrohan - Bouzouki
Lisa O’Neill - Vocals, Banjo and Guitars
Radie Peat(Lankum) - Vocal on The Factory Girl

Colin Meloy / Colin Meloy Sings Trad. Arr. Shirley Collins

 

2017年のオファ・レックス『The Queen of Hearts』で見事にオリヴィア・チェイニーのアルビオン・バンドになったディセンバリスツですが、フロントマンのコリン・メロイは、10年以上も遡る2006年にシャーリー・コリンズのトリビュートEP『Colin Meloy Sings Trad. Arr. Shirley Collins』を自主制作していました。
 
このEPでコリンは、シャーリーの初期のレパートリーから「Dance To Your Daddy」「Charlie」「Barbara Allen」「Cherry Tree Carol」「Turpin Hero」「I Drew My Ship」の6曲を歌っています。
 
このうち1曲目の「Dance To Your Daddy」を除いた5曲は、シャーリーが1958年に録音し、2枚のデビュー・アルバム『Sweet England』(英Argo)と『False True Lovers』(米Folkways)に収録されているものです。ちなみにこの時のセッションは、ピーター・ケネディとアラン・ローマックスによってプロデュースされ、ジョン・ハステッド(banjo)、ラルフ・リンズラー(g)、ガイ・キャラワン(g)がバックを務めていました。
 
EPは、全曲コリン自身によってホーム・レコーディングされていますが、ジャコバイト・ソングの「Charlie」のみディセンバリスツのマルチプレイヤー、クリス・ファンクと同じくレコード・ジャケットを手掛けるイラストレーター、カーソン・エリスが、それぞれバンジョーとボーカルでバック・アップをしています。
 
また、チャイルド・バラッドの「Barbara Allen」は『Colin Meloy Sings Live!』ではギターの弾き語りで歌われていましたが、ここでは迫力のあるエレクトリック・トラッドで聴くことができます。そして、最後の「I Drew My Ship」はアカペラで。
 
コリン・メロイのシャーリー・コリンズに対するリスペクトがひしひしと伝わる一枚です。
 

 

 

二つの「ホリゾンタル(I Just Want To Be Horizontal)」

 
「ホリゾンタル」という楽曲があります。
初めて聴いたのは80年代の初めにカナダのアコースティック・スイング・グループ、Short Turnの1stアルバム『Short Turn』(1977)のB面でした。
オリジナル曲やジェシ・ウィンチェスターのLaisse Les Bons Temps Rouler、キンクスのSunny Afternoonなどに混じって歌われていた「ホリゾンタル」は、女性メンバーであるシャロン・キーツのそこはかとなく漂う品ある倦怠感が何とも言えず、一遍で好きになり何度も繰り返し聴くようになりました。
しかしインターネットなどの無い時代、作者のH.DAVID L.RICCIのクレジットだけでは辿りようもなくオリジナル曲ではないにしろ、周辺のSSWによる楽曲と思い込み、フェイヴァリット・ソングの一つとしてレコード棚にしまわれていました。
 
ところが先日、お客様のリクエストでOriginal Sloth Bandの1st『Whoopee After Midnight』をかけたところ、あの「ホリゾンタル」が聴こえてくるではありませんか。
Original Sloth Bandは既に1973年の時点で「ホリゾンタル」を取り上げていたのでした。Short Turnは先輩格のOriginal Sloth Bandのヴァージョンを聴いていたとも考えられます。どうしてもOriginal Sloth Bandを聴くときには2枚目の『Hustlin' & Bustlin'』をかけがちで、長い間不覚にも気づけませんでした。
 
早速、ライナーノーツを見ると「Probably the only other version of "I Just Want To Be Horizontal" is by Pat Flowers and his Rhythm.」とあります。今の時代、この先を辿って行くのは容易いことです。
 
パット・フラワーズは、1940年代に活躍したアメリカはデトロイト出身のジャズ・ピアニスト兼シンガーでした。ニューヨーク時代にはファッツ・ウォーラーと頻繁にコラボし、ウォーラーの死後はその後継者として認められていたようです。なので彼のレパートリーの中にはAin't Misbehavin'やHoneysuckle Roseもしっかりと含まれています。
件の「ホリゾンタル」は1946年7月15日ニューヨークでPat Flowers & His Rhythmによって録音され、ボーカルはパット本人ではなく、Bunky Pendeltonが歌っています。定かではありませんが楽団の一員でしょう、女性ボーカリストです。しかも作者のH.DAVIDは、後にバート・バカラックとコンビを組むあのハル・デイヴィッドでした。
 
たぶんシャロン・キーツは、Bunky Pendeltonのボーカルをイメージして録音したと思われます。Short Turnのデビュー作、ここ最近カフェトラモナのヘビーローテーションです
 

安宅浩司シングス高田渡

 
よしだよしこさんの新作『今日一人の友だちを見送って』は、高田渡さんの「鉱夫の祈り」で終わります。マウンテン・ダルシマーで弾き語られるよしこさんの「鉱夫の祈り」は数ある高田渡カヴァーのなかでも指折りの一曲と云っていいでしょう。
 
かつて、渡さんのベルウッド三部作『ごあいさつ』『系図』『石』をハンバートハンバート、おおはた雄一、ラリーパパなどの若手ミュージシャンにより、曲順も含めそっくりそのままカヴァーするというトリビュート・アルバムがミディクリエイティブからリリースされました。
 
その中で、安宅浩司さんも高田渡曲を数曲カヴァーしています。『ごあいさつ』では「ブルース」をミシシッピ・ジョン・ハートを髣髴させるフィンガーピッキングで、『系図』では「ミミズのうた」をギター、バンジョーなどをひとり多重録音し、歌っています。後半に聴けるエレクトリック・スライドは、実にカッコよく、まさにマルチ弦楽器奏者の面目躍如といったところです。
そして、極めつけは『石』での「火吹竹」です。オリジナルは中川イサトさんの粗削りなスライド・ギターが印象的な名唱ですが、ここで安宅さんはピアノをバックにスライド・ギターを弾きながらタイトル曲「石」と並ぶ名曲に挑んでいます。安宅さんの飄々とした歌声は、オリジナルとはまた別の深い味わいで、トリビュート三部作の大トリにふさわしい見事な出来栄えと思います。これも指折りの高田渡カヴァーでしょう。

「南部在郷紳士録 サザンランド・スワンパーズ」

 
手元に「南部在郷紳士録 サザンランド・スワンパーズ」というブラックホークの松平維秋さんがお書きになった文章があります。これは、1973年ころにブラックホークで組まれていた「スワンプ特集」に合わせて店内で配布されたフリーペーパーを、2014年にCD通販店タムボリンの船津さんが複製発行したものです。
 
明日7月23日は、「南部在郷紳士録 サザンランド・スワンパーズ」でも紹介されているトニー・ジョー・ホワイトの75回目の誕生日です。そしてカフェトラモナも開店からやっと1か月が経ちました。そこで明日は、「南部在郷紳士録 サザンランド・スワンパーズ」をガイドに、かつて「スワンプ」と呼ばれたアメリカ南部の若しくは南部を志向する音楽を聴きたいと思います。
 
さて、「南部在郷紳士録 サザンランド・スワンパーズ」は、「リバプールやサンフランシスコで成長した"新しいロック"は、大人になった今、記憶の彼方の"ふるさと"をたずね始めました。それは、昔からよい音楽なら持っていた"物語る具体性"が、ロックから失われそうになったからです。そこで心あるミュージシャン達は、人々の生活の内に住むことのできた過去の音楽に、自分の表現を学ぼうとしたのです。」という松平さんらしい美しい書き出しで始まります。
 
さあ、私たちも聴き始めましょう。

 

 
Delaney & Bonnie / The Original Delaney & Bonnie & Friends
Rita Coolidge / Nice Feelin'
Alex Taylor / With Friends and Neighbors
Richard Supa / Homespun
Don Nix / In God We Trust
Jeanie Greene / Mary Called Jeanie Greene
The Alabama State Troupers / Road Show

 

 
Tony Joe White / Homemade Ice Cream
Doug Kershaw / Doug Kershaw
Link Wray / Link Wray
Jesse Ed Davis / Ululu
Roger Tillison / Roger Tillison's Album
Marc Benno / Ambush
Ry Cooder / Ry Cooder

 

Christopher Kearney / Christopher Kearney
Jesse Frederick / Jesse Frederick
Jackie Lomax / Three
Dan Cassidy / Dan Cassidy
Pamela Polland / Pamela Polland
 
お気づきかと思いますが、「南部在郷紳士録 サザンランド・スワンパーズ」には後にスワンプの名盤と語られるボズ・スキャッグスの69年作『Boz Scaggs』が触れられていません。これは件の名盤がブラックホークのコレクションに加わるのが74年の4月だからです。この時、松平さんは「マッスル・ショールズを志向した先駆的アルバムで出来も素晴しく、69年とは思えません。最新作のSlow Dancerに至る期間は、いわゆるボズ・スキャッグス愛好家はこのアルバムの幻をみつづけて来たのではないかと思える程です。」と褒めたたえています。

 

 
ところで、メンフィスの大御所ジム・ディッキンソンについては「ライ・クーダーの二作目をプロデュースしたジム・ディッキンスンは自分のアルバムを発表しましたが、これは"プロデューサー根性"に自ら溺れて、スワンプの中に"ドラマ"を持ち込むことに失敗しています。」と辛口の評価です。
 
しかし、その後のディッキンソンのストーズやディラン、アレックス・チルトンやチャック・プロフィットなどとの八面六臂の活躍ぶりはご存知の通りです。そして、シド・セルヴィッジや息子のコディとルーサーのNorth Mississippi Allstarsとの世代を超えたコラボには目を見張るものがあります。特に、ルーサーがThe Sons of Mudboy名義でリリースしたジム・ディッキンソンの追悼アルバム『Onward And Upward』は、ジム・ディッキンソンの遺志が次の世代に引き継がれ、マッドボーイの息子たちの奏でるスワンプに"物語る具体性"がはっきりと窺がえる名作といえるでしょう。
 
そんなジム・ディッキンソンの11回目の命日(8月15日)ももう間近です。最後に、哀悼の意味を込めて松平さんが聴くことのできなかったその後のジム・ディッキンソンの作品群を聴いて終わりにしたいと思います。
 
 
Boz Scaggs / Boz Scaggs
Jim Dickinson / Dixie Fried
Jim Dickinson / A Thousand Footprints in the Sand
Mudboy and the Neutrons / Known Felons in Drag
Sid Selvidge / The Cold of The Morning
Luther Dickinson and the Sons of Mudboy / Onward And Upward

Jalopy Records 7 Inch Series

 

いつもはレスポンスの悪い(半年も待たされたこともあります。)ニューヨークはブルックリンのJalopy Recordsから今回は注文から2週間程度でレコードが送られてきました。届いたのは7 Inch Seriesの706〜709の4枚。これでこのシリーズ、現在のラインナップが顔を揃えました。

 

Jalopy Recordsは、米オレゴンのMississippi RecordsやサンフランシスコのTompkins Square Recordsと並んでカフェトラモナが最も信頼しているレーベルのひとつで、フォーク、ブルース、オールドタイムなど現代のアメリカン・ルーツ・ミュージックの若きリヴァイヴァリストたちの音源を主にアナログ盤とDLでリリースしています。

 

例えば、映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』のサントラ盤でニュー・ロスト・シティ・ランブラーズのジョン・コーエンと共演したダウンヒル・ストラグラーズのフルアルバム『Lone Prairie』、ジム・クウェスキンとの共演アルバムがあり、一緒に来日したこともあるサロマ・ウィルソンの新ユニットThe Four o'clock Flowersの唯一のアルバム『The Four o'clock Flowers』などをリリースしています。この他、クラレンス・アシュレイの1963年10月ガーデス・フォーク・シティでのライヴ・アルバム『Live and In Person』などもある頼もしいレーベルです。

 

7 Inch Seriesは、クラウドファンディングにより資金調達を行い、4週ごとに新譜をリリースしていく企画で、14組がリストアップされており、既に9枚の7インチレコードがリリースされています。今後はカロライナ・チョコレート・ドロップスのハビー・ジェンキンスなども予定されています。

現在のラインナップは、

 

Jackson Lynch 7 Inch Series 701

Willy Gantrim 7 Inch Series 702

Pat Conte 7 Inch Series 703

Walker Shepard 7 Inch Series 704

Clifton Hicks 7 Inch Series 705
Meredith Axelrod Jalopy 7 Inch Series  706

Noah Harley Jalopy 7 Inch Series 707
Papa Vega's Dream Shadows Orchestra 7 Inch Series 708
Eli Smith 7 Inch Series 709

 

ですが、7/4、Mamie Minch & Tamar Kornがデジタルアルバムでのみリリースされました。

まだまだ、これからが楽しみな 7 Inch Seriesです。

ヤマハ渋谷『ROCK54』

 

開店準備のため古い資料を整理していたら1970年代にヤマハ渋谷が発行していた『ROCK54』というリーフレットが出てきました。

 

340mm四方の紙を縦に二つ折りにしたもので、No.5からNo.10まであります。No.5が1971年6月号、No.6が8月号、No.7の12月号からは毎月発行で、No.8は翌年1972年1月号で、No.9、No.10はそれぞれ同年2月号、3月号となっています。
制作は、No.7までが「Age Ogura + Yousuke Kawamura 100%Studio」で、No.8からは「Yamaha Shibuya Popular Record Corner」でアート・ディレクションが「Yousuke Kawamura with Your Sweet 100% Studios」となっています。これだけでも興味深いですよね。
 

各号は、コラムが2本ずつ、「Here,There & Everywhere」というニュース欄と「Latest Arrival !」という新譜紹介で構成されています。そしてNo.7からは日本ロッカ・バラード愛好会の会長さんによる「Rock'n Roll Here To Stay !!」という連載物が始まっています。ちなみに各号のコラムは、

 

No.5 ザ・ファースト・ファミリー・オブ・ニューロック/小倉エージ(James Taylor関連)、If I Could Only Remember My Name...(無署名 David Crosby関連)
 

No.6 ハロー・ミック!!/河村要助、ブリティッシュ・ロック…百鬼夜行の魅力と興奮/大貫憲章
 

No.7 ラズベリィ、シャーロック帽、そして英国古謡/松平維秋(エレクトリック・トラッド関連)、アフロディーテに出かけて(座談会)
 

No.8 バングラ・デシ・コンサート・ライブ・レコード登場/木崎義二、10 Minutes With Takurou Yosida(インタビュー)
 

No.9 思いつめるという事はいい事だ! ジョン・アンド・ヨーコとの出合い/横尾忠則、アメリカ南部の泥の中から生れ出たロックン・ロールの子供達/渡辺忠孝
 

No.10 Tasty Rory !! ギターマン、ロリー・ギャラガーとテイストのおハナシ/大貫憲章、Ry Cooder キースのマネッコ事件/かんせつかづ
 

と、かなり力の入った内容になっています。

 

No.7のアフロディーテというのは、1971年8月6日(金)7日(土)に箱根芦ノ湖畔で開かれたロック・コンサートで、ピンク・フロイド、バフィー・セント・メリー、1910フルーツガム・カンパニー、成毛滋グループ、渡辺貞夫クインテットなど出演しました。今で云うロック・フェスですね。ピンク・フロイドは、シカゴ、グランド・ファンクに続く、大物ロック・グループの来日公演で、大変評判になっていましたが、「ピンク・フロイドは期待していたほどでもなく、1910フルーツガム・カンパニーのほうが全然盛り上がった」というアフロディーテに行ったクラスメイトの感想を今でも強烈に覚えています。

 

このほかニュース欄では、スティーライ・スパンからアシュレイ・ハチングスとマーティン・カーシーが抜けたことやグリースバンドが解散したなどかなりマニアックな話題も取り上げられています。また。新譜紹介欄でもポールの『ラム』やジョンの『イマジン』にまじってフェアポートの『ババクム・リー』やイアン・マシューズのセカンド、ペンタングル『リフレクション』などが紹介されていて、何やらブラックホークの松平さんの影がチラホラと伺えます。そういえばヤマハ渋谷でレコードを試聴している松平さんを度々お見掛けしました。

 

そんな『ROCK54』です。是非ご来店いただきご覧いただけたらと思います。
 

 

【VINYL再訪】 とりわけ10月の風が:林ヒロシ


 

映画『バッシング』『春との旅』『海辺のリア』などで著名な小林政広監督が、70年代にフォークシンガーとして活動し、75年に自主制作した『とりわけ10月の風が』が日本フォーク史上に残る名盤だと知る人はあまり多くいません。

トラモナ店主は、当時FMラジオの深夜放送でこのアルバムを聴き、いたく感動したのを覚えていますその後、友人と発行していた『VINYL』という小冊子でアルバムを紹介しましたが、今回は、その「『歩く、人』のHobo's Lullaby」と題したレビューを再掲してみます。

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『歩く、人』のHobo's Lullaby

とりわけ10月の風が:林ヒロシ(SOUR GRAPE RECORDS ALP201)1975
A.ぅ織螢△療兄鉢▲函璽ング・シアターグリーン大虐殺9圓海Δ萓草いかした靴買いにしの胸の中で休ませておくれズ能列車
B(卞酸敝筬△燭修れ時(コカインの木の下)スイング・ジャズぅ轡礇鵐愁鶚ハ桟遏⊂硝椶量覘Υ┐ったころ

 

小林政広という映画監督がいる。緒形拳が主演した『歩く、人』で日本映画では初めての3年連続カンヌ国際映画祭出品という快挙を果たし、前作の『La Coiffeuse 女理髪師の恋』がロカルノ映画祭のワールドプレミア上映になるほど国内外に熱狂的なファンを持つ監督だ。そんな小林が70年代の中ごろ林ヒロシ名義で自主制作したアルバムが日本フォーク史上に残る名盤だと知る人は意外に少ない。

 

『とりわけ10月の風が』と題されたそのアルバムは、1975年1月30日、2月20日、21日の3日間、テイチク杉並スタジオで録音され、その年のうちにリリースされている。参加ミュージシャンは坂本りゅういち(Piano)、磯部昌良・杉本寿明(Electric Guitar)、朝比奈逸人・佐久間順平(Acoustic Guitar)、鈴木アキ(Electric Bass)、備瀬益夫(Drums)。もちろん坂本りゅういちは若き日の坂本龍一、友部正人の『誰もぼくの絵を描けないだろう』で素晴らしいピアノを聴かせ、レコーディング・デビューを果たした坂本の2度目の録音セッションになるのだろう。佐久間順平は大江田信とアコースティック・デュオ林亭を組み、唯一のアルバム『夜だから』を73年にセルフ・リリース。林ヒロシの詞を唄った楽曲を含むアルバムは本作と並ぶ日本フォーク史上屈指の名盤だ。また朝比奈逸人はのちに高田渡にも唄われる「ウィスキー」「トンネルの唄」の作者で、ここではライナー・ノーツも手がけている。オリジナル盤のジャケット写真は高田渡によるもの。しかしこの味わい深いモノクロ写真がCD化に伴って、凡庸なイラストに変わってしまったのは残念だ。フレッド・ニールのデビュー作『ブリーカー&マクドゥガル』がリイシューの際、ブリーカー通りとマクドゥガル通りの交差点に佇むフレッドという秀逸なジャケット写真からイラストに差し替えられたのを思い起こす。

 

 

さてアルバムは林ヒロシ自身のアコースティック・ギターの弾き語りで幕を開ける。歌声自体は高田渡や友部正人などと比べると強烈な個性の持ち主とは云いがたいが、歌詞の世界は30年経った今でも色褪せずその瑞々しさを湛えている。特に酒場の片隅で酔いつぶれるひとりの男を唄った「スイング・ジャズ」は我が国におけるホーボー・ソングの傑作。タウンズ・ヴァン・ザントやジョン・プラインの描いた詩の世界を髣髴させるが、ここら辺りが小林政広監督による映像の源流になるのは間違いないだろう。また坂本龍一を中心とした演奏は70年代初頭のリプリーズに残されたアーロ・ガスリーやマリア・マルダーなど一連のフォーク・アルバムを想わせ、林の若く、清新な歌声を際立たせている。さらにカヴァー曲が秀逸。「シャンソン」は早川義夫の『かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』に収められていた作詞 高田渡、作曲 早川義夫の楽曲。林の歌唱はオリジナル以上の魅力を湛えている。そして「片道切符」はスティーヴ・グッドマンの名曲‘The City Of New Orleans’に自作の詞を付けたもので、坂本の土臭くファンキーなアレンジが心地よく、アルバムの聴き所のひとつとなっている。

 

75年のリリース当時FM東京の深夜番組『片岡義男と安田南の気まぐれ飛行船』で田中研二の自主制作盤『チャーリー・フロイドのように』と一緒に本作が紹介されたことがある。その時のエア・チェック・テープはアナログ盤購入までのヘヴィー・ローテーション・アイテム。繰り返し聴くそのテープの中で最も印象に残ったのが「六月、松本の夜」で、〈松本〉という地名を耳にするたびにこの名曲を思い返すほどだった。しかしこの曲の中で唄われている〈すてきな君〉が林と一緒にツアーをすることの多かったSSWのいとうたかおだと分かったのはだいぶ後になってのこと。さらにいとうたかおが名古屋に戻ってセンチメンタル・シティ・ロマンスと録音したセカンド・アルバム『Booking Office(出札口)』に収録された「梅雨前線」の中で唄った〈相棒〉は林ヒロシその人だという。その後〈松本〉という地名を耳にするたびにギター・ケースを抱えた二人のフォーク・シンガーを想うようになったのは云うまでもない。(VINYL Vol.7 No.1 2003.12.1)

 

 

 

 
 

スーマーLive

 
開店のはっきりした日程が決まらないままスーマーさんのライブが7月1日(日)に決まりました。
スーマーさんは、既に2枚のフルアルバムをリリースしている「弾き語り」で、彼の歌声がTVドラマと映画の『深夜食堂』でエンディング曲や挿入歌として使われているのでご存知の方も多いと思います。
自作曲のほか、高田渡曲からヴァン・モリソン曲までカヴァーし、ギターと4弦バンジョーで唄い継いでいます。
実は、カフェトラモナの店名もスーマーさんがディランの「ラモーナに」を日本語でカヴァーしていて、そのタイトル「トラモナ」を拝借したもの。なので、Cafe ToRamonaにとってとても重要なミュージシャンで、そのスーマーさんに最初のライブをしていただくのは大変嬉しく、愉しみなことです。
 
スーマーLive
7月1日(日)
open 15:30 / start 16:00
¥2500(+要ドリンクオーダー)
 
ご予約は info@cafetoramona.com までご連絡ください。
スーマーさんのサイトはこちら
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