トピックやトレイラーに誘うLisa O'Neillの『Heard A Long Gone Song』 (2018)

 

久々にMM誌の輸入盤紹介ページを見て買ってみました。ジャケ写のパンキッシュな佇まいに胸がざわつき、1曲目の無伴奏シンギングに心が鷲づかみされます。

ライザ・オニールは、アイルランドはキャバン州出身、現在はダブリンで活躍するフォーク・シンガー。これまでの3作は自主制作盤でしたが、この4作目はラフトレード傘下のRiver Lea Recordingsからリリースされています。

トラッド4曲、自作曲3曲、自作詩にトラッド曲を付けたもの1曲、ポーグス・カヴァー曲1曲の全9曲が収録されていますが、圧巻はB面1曲目のトラッド「The Factory Girl」。ライザはここでダブリンのトラッド・バンドLankumのラディー・ピート(Radie Peat)と硬質かつパワフルな無伴奏デュエットを聴かせてくれます。

ライザとラディーの「The Factory Girl」は、ラディーのアイデアによりマーガレット・バリーのバージョンとネリー・ウェルドンのバージョンを組み合わせたものとのこと。凄いです。リアム・ウェルドンの『Dark Horse On The Wind』(1976) を髣髴させます。ちなみにネリー・ウェルドンはリアム・ウェルドンの奥さんです。

自作曲ではムッソリーニ暗殺を企てたアイルランド女性を唄った「Violet Gibson」が秀逸。まるで襲撃現場の映像を見ているようで、ストーリーテラーとしてのライザ・オニールの面目躍如といったところです。

また「A Year Shy of Three」は、アイルランドの画家フレデリック・ウィリアム・バートンの描いた「The Aran Fisherman's Drowned Child」にインスパイアされて書いた自作詩をコーマック・ベグレイ(Cormac Begley)がコンセルティーナで奏でる美しいスロー・エア「The May Morning Dew」のメロディで唄ったもの。ベグレイの卓越したコンセルティーナはアルバム全体の随所で聴くことができ、いい味を醸しています。

アルバムはシェイン・マガウアンの「Lullaby of London」で幕を閉じますが、抜群の選曲です。ポーグスの3rd『堕ちた天使』で名曲「ニューヨークの夢」と肩を並べ収録されていた、これも名曲です。アルバム・タイトルの『Heard A Long Gone Song』はこの曲の一節を引用したものです。

マーガレット・バリーやネリー・ウェルドンをお手本にしたというライザの硬質なシンギングがトピックやトレイラーの世界に誘ってくれる名盤です。

Track List
A1. The Galway Shawl (Trad.)
A2. Along The North Strand (Trad.)
A3. Blackbird (Written by O'Neill)
A4. The Lass of Aughrim (Trad.)
A5. Violet Gibson (Written by O'Neill)

B1. The Factory Girl (Trad.)
B2. Rock The Machine (Written by O'Neill)
B3. A Year Shy of Three (Words by O'Neill,Musical Arrangement Trad. )
B4. Lullaby of London (Shane MacGowan)

Musicians
Cormac Begley - Concertinas
Christophe Capewell - Fiddle and Harmonium
Libby McCrohan - Bouzouki
Lisa O’Neill - Vocals, Banjo and Guitars
Radie Peat(Lankum) - Vocal on The Factory Girl