ルーサーとストロベリー・ムーン姉妹のスワンプの極み Luther Dickinson and Sisters of the Strawberry Moon / Solstice (2019)

 
ノース・ミシシッピィ・オールスターズのフロントマンであるルーサー・ディッキンソンは、バンドやソロ活動のほかに様々なプロジェクトで活躍している。例えばメンフィスのブルース・シンガー、アルヴィン・ヤングブラッド・ハートや昨年活動を再開したスクイーレル・ナット・ジッパーズのジンボ・メイサスと作ったSouth Memphis String Band、ルーサー以外は女性ばかりのフォーク・バンドThe Wandering、亡き父追悼のためのThe Sons Of Mudboyなどなど。この他にもジョン・ハイアットやジム・ローダーデイルらとのコラボレーションなど八面六臂の活躍である。

それはちょうど父親のジム・ディッキンソンがメンフィスやマイアミなどでプロデューサー、スタジオ・ミュージシャン業で活躍するかたわらMud Boy & The Neutrons、Raisins In The Sunなどのバンドに参加したり、自らのフィールド・レコーディングと称しデルタ・エクスペリメンタル・プロジェクト・シリーズをコンパイルして南部の伝統音楽にスポットライトをあてたのとよく似ている。

Luther Dickinson and Sisters of the Strawberry Moonは、そんなルーサー・ディッキンソンの新しいプロジェクトで、『Solstice』はその1stアルバムだ。ここでルーサーは、アリソン・ラッセル(バーズ・オブ・シカゴ)、シャーデ・トーマス、エイミー・ラヴェル、エイミー・ヘルム、コモ・ママスの5組8人の魅力的な声を持つ女性陣にヴォーカルを任せ、自身はプロデュースとギターに専念し裏方に徹している。

アルバムの口火を切るバーズ・オブ・シカゴは、アリソン・ラッセルとJTネロことジェレミー・リンゼイのおしどりデュオ。2ndアルバムの『リアル・ミッドナイト』がジョー・ヘンリーによってプロデュースされたことにより国内盤もリリースされ広く知られるようになったバンドだ。3作目の『ラブ・イン・ウォータイム』をルーサーがプロデュースした関係でこのプロジェクトに参加したのだろう。1曲目の「Superlover」はそのアルバムに収録された曲の再演だ。

シャーデ・トーマスとエイミー・ラヴェルは、ルーサーのプロジェクトのひとつThe Wanderingのメンバー。ヴォーカルだけでなくルーサーのソロ・アルバムではちょいちょい顔を出しているお馴染みのリズム・セクションでもある。ドラムスのシャーデ・トーマスは、ヒル・カントリーのリジェンド、オサー・ターナーの孫娘で、彼女のファイフ&ドラムはプリミティブな南部の情感とグルーヴを醸し、遥かアフリカへと遡っていくようだ。

アップライト・ベースのエイミー・ラヴェルは、甘く掠れたソプラノが魅力的なシンガーで、2ndアルバムの『Anchors & Anvils』はジム・ディッキンソンが、4枚目の『Runaway's Diary』はルーサーがプロデュースをしている。そして最新作の『Hallelujah I'm A Dreamer』は夫であるギタリストのウィル・セクストンとのデュオ・アルバムで、本プロジェクトではエイミーがヴォーカルをとるトラックにはウィルも参加してデュオ・アルバムの収録曲を再演している。

もう一人のエイミー、エイミー・ヘルムは、もちろんリヴォン・ヘルムの愛娘。彼女の2ndアルバムの『This Too Shall Light』にバーズ・オブ・シカゴのアリソン・ラッセルとJTネロがバック・ヴォーカルで起用されたことから繋がりができたのだろう。エイミーの歌う「Like A Songbird That Has Fallen」は映画『コールド マウンテン』のためにボブ・ニューワースとT・ボーン・バーネットが書いた楽曲で、サントラ盤ではリール・タイム・トラヴェラーズが歌っていたが、リール・タイム・トラヴェラーズのヴォーカリスト、マーサ・スキャンランは自身の1stアルバム『West Was Burning』をエイミーの招きでリヴォン・ヘルムのザ・バーンで録音している。

エイミーのもう一曲は「Sing To Me」で、「歌って あなたの声を聴かせて」「歌って あなたのドラムを叩いて」とまるで亡き父リヴォンに歌いかけているようだが、アメリカン・ロックの最高峰ザ・バンドの名ドラマーの愛娘が、メンフィスの伝説的プロデューサーの息子の主宰するプロジェクトで歌い、さらにはヒル・カントリーの長老的ブルースマンの孫娘がバックアップするというシチュエーションには感慨深いものがある。連綿と続く南部の音楽的遺産が世代を超えて引き継がれてゆく過程を垣間見たような気がする。

アルバムのA面、B面とも最後はコモ・ママスだ。アンジェラ・テイラー、デラ・ダニエルス、エスター・メイ・ウィルバーンからなるミシシッピ州コモ出身のゴスペル・トリオは、2013年全編アカペラの『Get An Understanding』でデビューを飾っているが、その何人も寄せ付けないド迫力のコーラスでアルバムを締めくくっている。

蛇足ながらアルバムは基本的には全編ジム・ディッキンソンのゼブラ・ランチ・スタジオでライブ・レコーディングされているが、曲によってはフィドルやオルガンをダビングしている。なかでも「Sing To Me」と「Til It's Gone」でのハモンドB3は秀逸だ。あのチャールズ・ホッジスがロイヤル・スタジオで録っている。

Luther Dickinson and Sisters of the Strawberry Moon / Solstice
Track List
a01. Superlover featuring Birds of Chicago
a02. Fly With Me featuring Sharde Thomas
a03. Hallelujah (I'm a Dreamer) featuring Amy LaVere
a04. Like A Songbird That Has Fallen featuring Amy Helm
a05. Kathy featuring Birds of Chicago
a06. Hold To His Hand featuring The Como Mamas

b01. The Night Is Still Young featuring Amy LaVere
b02. Sing To Me featuring Amy Helm
b03. We Made It featuring Sharde Thomas
b04. Cricket (At Night I Can Fly) featuring Amy LaVere
b05. Til It's Gone featuring Birds of Chicago
b06. Search Me featuring The Como Mamas
 
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